+10万ヒット記念企画「夏」+


オマケ













「…アウル」
「あ?なんだよステラ」
「…あれ、きれい」

くい、と浴衣の袖を引っ張られたアウルは面倒臭そうに振り返る。
少し後ろを歩く少女の瞳はじっと何かを見つめていて、いったい何だとその先を見やる。

「……水飴?」
「あぁ、色んな形に細工してるヤツか。ステラ、あれを全部食うのは無理じゃねぇか?」
「だよな、絶対飽きるって」
「…だめ?」
「………。………おいスティング、どうする」
「俺に押し付けるなよ」
「だって財布渡されてんのお前じゃん」

せっかく今日のためにと用意された浴衣を、アウルは彼らしく着崩している。
普段着だろうと浴衣だろうと前を解放させるところは変わらないんだな、とスティングは溜め息を吐いた。
普段着に関しては、スティングの方が絶対センスない、とアウルは断言しているが。

「ほらステラ、ちゃんと全部食えよ」
「…うん!」

きらきらと目を輝かせて店へ駆けていくステラ。
からんころんと鳴る下駄がお気に入りで、着替えた後は意味もなくずっと歩いていた。
ガキじゃあるまいし、とアウルは呆れていたが止めようともしていなかった。
ああしてステラが楽しそうにしているのを見るのは、スティングも嫌いではない。

「お、スティングここ面売ってるぜ」
「面だあ?」
「…あ、ステラこのお面好き」
「………見覚えがあるような……」
「………あぁ」
「?」

不思議そうに首を傾げるステラに、なんでもねぇよとスティングが彼女の金髪をかき混ぜる。
せっかくの髪が台無しじゃねえかよ、とアウルが眉を寄せてステラの髪をいじる。
されるがままのステラは、ただ一生懸命に水飴を消費し続けていた。

時折、ちらちらとお面の方に視線が移動してはいたが。

「………ステラ、あの面欲しいのか?」
「………………うん」
「ネオ仮面って、だっせー名前だぜ」
「でも…」
「ま、せっかくの祭りだ、土産にでもなるだろ。ほらアウル、お前つけとけ」
「は!?ふざけんな、んなのお前がつけりゃいいだろ!」

喧嘩しながらもお面を買ってくれる気らしい仲間に、ステラの顔は嬉しそうに綻ぶ。
そしてその笑顔だけで、アウルもスティングもなぜか黙り込んでしまうのだから不思議だ。


それは平和な、ある夏の夜の出来事。














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