++過去拍手1++







アスランについて<イザーク・ディアッカ編>







 なぜ俺がわざわざアイツについて話さなければならんのだ!

 アカデミーの頃から、いつもいつも憎らしいヤツだった。

 すました顔をして、いつも成績トップを奪っていきながら。特務隊にまで入っておきながら、逃亡だとっ!?許せるわけがないだろうっ。

 ………だが、あいつが祖国を守りたいと。そう思う気持ちが強いのは、まあ認めてやってもいい。

 戦場で背中を預けてやってもいい、と思えるヤツでもある。

 だがな、復隊していきなりフェイスになっておきながら、今度は撃墜とはどういう事なんだ!え?

 だから俺にとってアイツは、だたむかつく。それだけだ。




 おいイザーク、暴れながら話すのやめろよ。あぁ、書類が……。
 え?俺も言うわけ?
 あーあ、また片付けが……ってだからイザーク、それはまだ未処理のヤツだから握り潰すのはやめろって。

 とりあえず、俺もアスランのこと最初は嫌だったね。

 俺たちよりひとつ下で、なのに冷静っていうか。

 そんでもって父親は国防委員長で、婚約者にはラクス・クラインだろ?そりゃ、多少は俺でもやっかむって。

 でも実際、実力はあるヤツだったよな。

 あの真面目で堅物なヤツが、アークエンジェルを助けたいって言ったときは、かなり驚いた。

 んで少し見直した、かな。




「ああああ!思い出すだけでええ!」
「だからイザーク落ち着けって」

 こういう所は二年たった今でも、ほとんど変わっていない。
 部下の前ではわりと冷静だが、どうしても宿敵を目の前にすると昔に戻ってしまうらしい。

「あ、俺がアスランの事あんま良く思ってなかった理由、別にあるわ」
「………何だそれは」

 ぎろり、と鋭い眼光で睨まれディアッカは苦笑する。

「いや、やっぱいい」
「何い?」
「まずは、後片付けだろ」

 肩をすくめて言うと、多少は悪いと思っているのか押し黙った。そのイザークに軽く苦笑いを向けて、片付けるかと床に身をかがめる。
 書類やらディスクやら。果てはペンとか花瓶まで落ちている。

 それらを整えながら、懐かしいなと思う。


 そう、こうやって後片付けが面倒になるから。

 だから、アスランの事をあまり良く思えなかったのだ。

 まあそれは、イザークのせいでもあるのだが。





















アスランについて<カガリ・ラクス・キラ編>






 アスランについてなんて。いまさら何言えっていうんだ?

 そりゃ……す、好きだけどさ。

 最初は嫌いっていうか、敵だと思ってたから。
 でもなんか抜けてるっていうか、そういうとこはキラといい勝負だよな。

 すっごい器用そうに見えて、色々と不器用だし。

 まあ、でも、ほら。その……私があいつのこと好きってのに、変わりはないけどな。







 アスランかぁ。

 小さい頃から一緒にいたから、なんか本当の兄弟みたい。

 戦争のせいで、もうアスランと解り合うことは無理なのかなって。
 そんなふうに諦めた事もあったけど。

 お互いに友達を奪われて、心の底から憎み合ったりもしたけど。

 でもやっぱりアスランはアスランで。

 僕の大好きな友達ってことに、変わりはないんだよね。

 いつも助けてもらってて、僕よりもずっとなんでも出来て。
 でも人付き合いは苦手みたいで。女子から人気はあったけどね。

 でも僕の前だと色々と口うるさいし、怒りんぼう。それがアスランかな。







 以前は私の婚約者でした。

 いずれ結婚するお方なのだと、幼いながらに理解していましたわ。

 とくに抵抗はありませんでした。アスランは無口でも、とても優しい方。
 そして私のために、あんなにたくさんのハロをくださいました。いまでも宝物です。

 あの長い争いの中で、私はキラと、アスランはカガリさんと。
 お互いに心から求めるひとに出会い、いまでは仲の良いお友達。

 彼は周りのことを、とてもよく考えますから…そのために苦しむことも多いのでしょうね。
 それに縛られてしまう。

 でもそこから抜け出すための力は、もう私が与えるものではありません。

 そうですわよね?アスラン。







「ふふ、可愛いですわね」

 トリィを撫でながら、ラクスが微笑む。

「しっかし、よくこんなの造れるよな」

 しげしげと、カガリはラクスがネイビーちゃん、と呼んでいるハロを眺めた。

「アスラン器用だからね。僕はこのマイクロユニットは苦手だったけど」
「………ラクスにもキラにもあってさ。なんで私にはないんだ?」

 ちょっと不貞腐れたように呟くカガリに、キラとラクスは顔を見合わせ笑う。

「何言ってるのカガリ」
「ちゃんといただいているでしょう?」

 その左手に光る、赤い石の指輪を。




















キラについて<アスラン・カガリ編>







  え?キラのことって言われてもさ、弟ぐらいしか。

 どんなふうかって……あー…泣き虫で、わけわかんないヤツ。

 最初は助けてもらったけどさ、その後の再会は最悪だったからな。いきなりぶん殴られたし。

 いや、あれは私も悪かったんだけどな。

 でもいつの間にか成長しててさ、なんか私よりも落ち着いちゃった気がする。

 ん?なんかムカついてきたぞ。





 その辺でやめておけカガリ。

 え…俺も言うのか。

 キラは平たく言えば幼馴染み。やれば出来るはずなのに、嫌いなことはまじめにやらないし、苦手な授業の課題も期限ぎりぎりまでやらないし。

 つまり、いっつも俺が面倒を見ていた。

 それから三年後の再会を果たして、色々とあったけど。

 でも俺にとって、あいつが大切な友達だって事に変わりはなくて。

 そしていざというときは、あいつの方が強かったりする。

 一度決めた事は、最後まで貫き通すんだ。

 優しくて甘ったれのくせに。






「なんか…褒めてくれてるのか微妙だね」

 キラがぼそっと呟く。

「キラについて語ってるだけだろ」

 カガリが腕を組んで言い放つ。確かにそうなのだが、なんだろうその態度は。

「だいたい、やっぱり僕が弟なの?」
「それ以外の何があるんだ。なあアスラン」
「………はあ、俺に振るなよ」

 だいたい双子なんだから、そんな事どうでもいいだろう?

「俺からすれば、どっちもどっちだ」
「なんだと」

 聞き捨てならない、とカガリが睨む。キラは苦笑して紅茶に口をつけている。

 完全に静観を決め込むつもりだ。

「そうやってムキになるとこが」
「うっ……。で、でも誕生日は私たちの方が早いんだぞ!」
「それ昔にキラが言ってたぞ。五年以上前ぐらいに」

 まだ幼い頃のキラと同レベルだと暗に言われ、カガリは言葉に詰まった。

 そしてキラも思い出したように、あぁ、と顔を上げる。

「そういえば言ってた。だから僕の方がアスランよりお兄さんって」
「ぐぐ……」

 完全にととめを刺され、カガリは唸った。

 こんな他愛のないことを話せる、そんな生活ができるのはキラが諦めないでいてくれたおかげだ。

 あの困難な日々の中でも。

 だから胸の奥で、カガリとアスランはそっと感謝するのだった。

 いつも自分たちを優しく包んでくれる、キラに。






















キラについて<ラクス編>







 キラの印象ですか?

 そうですわね…初めてお会いしたときから、キラはとても優しく接してくださいました。

 綺麗な紫の瞳に、微笑んでしまったのを覚えていますわ。


 そして優しさと、強さを持つ方。

 何が大切なのかを知っている方。


 そのために苦しみ、悲しんでいるのだと。そばでお世話していたとき、感じました。

 だからこそ正しい道を選べたのでしょうね。


 そしていまは、誰より大切な方です。キラがいるから、私は幸せになれました。

 ですからキラが笑ってくださると、私もとても嬉しくなります。


 穏やかに静かに、笑い合える日々を二人で過ごせたなら。そんな世界にできれば。

 ひとりひとりの力はとても弱く、小さいものです。

 ですが隣にキラがいて、仲間がいて。

 いつかこの光が、強く世界を照らせるものとなるように。



「なあラクス」
「どうなさいましたか、カガリさん」

 温泉に浸かりながらぽつり、とカガリさんが口を開き私は振り返りました。

「ラクスってさ、すごいよな」
「そうですか?カガリさんこそ、国を想って行動されて、すばらしいと思いますわ」
「そ、そうじゃなくてだな。ううーん……、そう!泣かないよな!」
「………そういう事でしたか。ふふ、私が泣いてしまっては、みなさんに心配をおかけしますから」

 私が微笑んで言うと、なぜかカガリさんはしゅんと落ち込んでしまい。

「……私なんて人前だろうが号泣している気、が」
「カガリさんはそれでいいと思いますわ。だからこそ、みなさんは信頼してくださるのでしょう。裏
表なく、誠実に真正面から言ってくれていると分かるから」
「それは馬鹿正直ってことか」

 そう言うわりに、カガリさんは笑っています。私もくすくすと笑いました。

「でも……私も泣かないわけでは、ないですから」
「当たり前だろ。泣きたいときは泣かないと」
「そうですわね」

 ただ泣いてもいいと、そう思える場所はひとつしかない。

 それはやはり、誰より愛しく、誰よりも大切なキラの胸だけですから。


 私にとってキラはかけがえのないもの。

 そういうことですわ。






















ラクスについて<キラ・アスラン編>







 ラクスと初めて会ったときは、かなり緊張してた。

 彼女はプラントの歌姫として有名だったし、婚約者になるひとだと言われて行ったせいもある。
 ピンクの妖精なんて呼ばれてる彼女だったが、実際会ってみて思った。

 あぁ、普通じゃないなと。
 ロボット相手に話しかけてみたり、友達だなんて言ってたり。俺には理解できない言動が多くて。

 そんな部分しか、知らなかった。

 いや、知ろうとしなかったんだ、俺は。

 自分にとって都合の良い部分だけを見て、それで理解したつもりになってた。
 それが俺とキラが争う原因になったものでもある。

 相手のことを、本当の意味で理解することは難しい。
 だからこそ、対話が必要で。俺も知ろうとしないといけない。

 それを教えてくれたのが、たぶんラクスなんだ。










 僕にとってのラクスは……想いそのもの。

 迷う僕を、立ち上がれるまで待っていてくれて。そして剣を与えてくれた。

 ナチュラルだとか、コーディネイターとか関係なく。僕自身を見てくれたひとだった。

 戦争を悲しいことだと言ってくれて、どれだけ心が安らいだだろう。
 いまにも軋んで壊れそうだった僕の心に、そっと流れ込むラクスの優しい声。

 ただ力だけで守ろうとしていた。でもそれじゃ何も終わらない。変わらない。
 そんな僕に、強い想いを与えてくれたきみ。

 平和を願うラクスのために、僕もできる事があるのなら。そんなきみを守りたいと。
 凛とした強さと、澄んだ瞳に。穏やかな光が溢れる日を。

 いつか、迎えたい。きみと。










「ラクス、本当にいいの?」
「何がですの?」
 
 共に海を眺めていたラクスに、そっとキラが尋ねる。

「プラントに戻らなくて」

 あそこでは有名なアイドルだったと、アスランとディアッカから聞いてキラは驚いた。

 そして同時に納得もした。アークエンジェルで彼女を保護したときに、彼女の歌声を聞いたことがある。

 とても綺麗な柔らかい声を。

「はい。戻るつもりはありませんわ」

 しかしラクスは過去の事には頓着しない、というようにきっぱりと頷いた。

「どんな理由であれ、私たちはザフトの方々にご迷惑をおかけしましたし。きっと私たちが
あちらにいては、何かと問題も起こるでしょうから」

 ラクスの先を見通す目は確かだ。
 パトリック・ザラという強力な指導者がいない今、プラントはきっと混乱しているだろう。
 そんな中で、ラクスを台頭させようと思う者が出てくるかもしれない。

「それにキラ」
「うん?」

 ふふ、といたずらっぽく笑うラクスに、キラは小さく首を傾げる。

「私は、キラと共にいたいですから」
「ラクス……」
「これからは、キラのために歌います。平和を願って」
「………うん」

 ありがとう、と小さく呟けばあの微笑が浮かぶ。

 やはり守りたい、とキラは思った。

 この穏やかな時間と、ささやかな幸せを。

 ラクスがそばで歌ってくれるのなら、僕には何ができるだろう。

「ラクス、カガリが呼んでたぞ」
「まあ、いけませんわ。私、カガリさんと食事を作る約束をしてましたのに」

 先に戻りますわね、と告げて去って行くラクスは、それでもあまり急いだ様子はない。

 のんびりと家へ帰って行く後姿に、アスランは小さく笑った。

「ああいう所は相変わらずだな」
「うん。初めて会ったときは驚いたよ」

 緊張感がないだけなのか、よほど肝が据わっているのか。真剣に頭を悩ませたものだ。

「僕にも…何かできるかな」
「なんだいきなり」

 なんの脈絡もない言葉に、アスランは目を丸くする。

「あぁ、うん…。女の子って強いよね」
「カガリあたりが聞いたら、怒り狂いそうな言葉だな」
「そうかな?」

 くすくすと、優しい空気にキラは自然と穏やかな表情を浮かべた。

「いまはまだ……何もできないけど。でも、そばにはいたいな」
「そうしてやれ。ラクスだってそのために地球にいるんだろ」

 アスランの言葉に、そうだねと頷いて歩き出す。

 今日も夕陽が眩しい。

「アスランも、カガリのために地球にいるんだもんね」
「キ、キラ!」

 照れたように口調が強くなるアスランに、キラはまたひとつ笑みをこぼす。



 ラクスがいてくれたから、きっとこうしてアスランともいられるんだよね。

 ラクスが気付かせてくれたから、俺はまたキラといられるんだ。



 たぶん同じことを考えている親友に、キラとアスランは笑みを深くした。













thank you...