+++ 萌 芽 +++



15、目覚めの息吹
















あの日から消えない、問い。

見つからない答え。


そしてまた繰り返されようとしている悲しみ。


今度こそ、見つけられるのだろうか。


もう時間はあまり、残されていない。
























<繰り返しお伝えします。現在、赤道を中心とした地域がもっとも危険と予測されています。沿岸部にお住まいの方は海からできる限り離れ、高台へ避難してください>

テレビからは同じ警告が放送されている。
怯える子供たちを宥めながら、ラクスとカリダは非難を急ぐ。

カガリとアスランがプラントへと出発してから数日、宇宙に浮かぶ墓標が地球へと落ちてきている。その知らせを聞いて、世界は混乱しているに違いない。あまりにも突然のことで、ラクスたちだって驚いたのだ。
なぜ、いきなり?それは誰もが思ったことに違いない。

もしかすると、これは自然の現象などではないのでは。何らかの意図によるものなのではないか。
皆そんな疑問をどこかで抱く。それは不審感を煽り、様々なものに亀裂を生む。

子供たちもそれを敏感に感じとっていた。
不安そうに揺れる瞳に、ラクスはいつもと同じように微笑む。


シェルターに移動するようにと、穏やかな声で告げれば幾分安心したような表情になる。
それに笑みを浮かべてから、ふとラクスはキラがいないことに気付いた。

「ラクスさん」
「はい」
「キラのこと、呼んできてくれるかしら」
「分かりました」

ありがとう、と悲しげな瞳にラクスも複雑な笑みを返す。

恐らく彼がいるであろう場所へ向かいながら、空を見上げる。
肉眼でもはっきり見えるほどに近付いてきている星は、大気の摩擦ですでに火の玉と化していた。

あれがいったいどれだけの悲劇を生み出すのだろうか。
この景色の中、ひとり佇んでいるであろう姿を思いラクスは足を速めた。


















誰もが恐怖に駆られ、少しでも安全な場所へと逃げ惑う。

大きな混乱に包まれた世界で、ただひとり。

静かに空を見上げる青年がいた。
長い間そこに座っていたかのように、椅子が立ち上がる動きに合わせて軋む音がする。

歩きなれた砂の感触を足の裏に感じながら、ゆっくりと海の方へ進んでいく。




光を拒むかのように縁取られた睫毛の下から、柔らかな紫苑の瞳がのぞく。
いまこのとき、全ての人々を呑み込もうとしている空にある巨大な塊に、キラはただ目をやった。



その先に見つめているのは絶望か、それとも遠い未来か。



虚空を映していた瞳に、わずかに光が宿る。まるで眠っていた何かが、揺り起こされているように。
また再び訪れる混迷の時代を、予期しているかのように青年は立ち続けた。






どうして?なぜ、また?






浜辺に辿り着いたラクスは、静かな背中に表情を曇らせる。愛しい者の背中が、悲痛な声を上げているようで。
穏やかに、静かに、子供たちと家族と笑って過ごせれば。それだけで良いのに。






燃え盛る星を見上げて、ただ祈る。

彼に幸せが訪れるようにと。

進む先に光があるようにと。






恐らくまた自分たちを巻き込むであろう、大きな波を予感しながら。




蒼い翼が甦るのは、そう遠くない未来。














fin...